胸の振子

ましゅまろまま

2022年07月20日 22:15

私たちのLIVEに何度も足を運んでくださっている方はもう幾度となく耳にしたことのある話題だと思うけれど、アルパは基本FのKeyになっている楽器だ。素直に弾いただけでは半音が出ない。転調なんてもってのほか。

歌と一緒に合わせるにあたってこの「FのKeyしか出ない」というところが大変なところでもあり、その自由ではない中でどうやってやっていくか?という所が面白いところでもある。
母と二人でやるともなく演奏を始めましゅまろままとして活動するようになってから、「もうちょっとKeyが高ければ・・・」「ホントはもうちょっと低いので歌いたいんだけど・・・」と何度そんな会話をしたかわからない。
そんな私たちに大きな転機が訪れたのは、おそらくもう10年以上前。おなじみのマイシャトーで『やぎたこ』さんとLIVEをご一緒した時のやなぎさんの一言だった。

「Fでやってるんだったら、Cでもできるんじゃない?」

!!!!!目からうろこ!!!!!

ヘ長調になっているシの♭の弦を巻いて半音あげて、そこからFとCの曲でアルパを演奏する私たちのスタイルが出来上がった。これはとっても、カナリ、大きな進化だった。
カヴァー曲のレパートリーもぐんと増えたし、何よりオリジナル曲も3rdアルバムはほとんどがCの曲になる程に。
ついでに調子に乗ってAの曲もやってみたりした。(でもこれは楽器に負担になることも、実感。やなぎさんが「あんまりいろいろやりすぎると楽器が壊れちゃうけど・・・って言ってたよ。その通りでした!!」)

やなぎさんからヒントをいただいて、ぶわぁ~~~~って大きく大きく広がった私たちの世界。本当に感謝しています。
こばく亭がOPENする以前は、マイシャトーに『やぎたこ』さんが来るたびに私たちがオープニングアクトを務めさせていただいた。
私たちはやぎたこさんが、本当に大好きで。お二人の人柄がにじみ出るような優しくて暖かいLIVE。うっとりとして胸がじーんとして、温かいものがからだの奥から沸き上がって来るような演奏。どこか遠い記憶が思い浮かぶようなハーモニーにじっとじっと聞き入った。

毎回驚くような数の楽器がステージに並べられるやぎたこLIVE。ギターにバンジョー、フィドル、オートハープにマウンテンダルシマ・・・来るたびに楽器が増えてるんじゃない?!
アルパも入れたらすごい弦の数で、全部で何弦だったか数えたこともあったけど、忘れちゃったなぁ。
私たちの使うハーモニカやオカリナ、ピアニカも含めて、こんなに沢山の楽器が並んでても、やぎたこさんとましゅまろままで一つも楽器がかぶっていなかったという奇跡!に気づいたのもやなぎさんだった。




マイシャトーでの『やぎたこLIVE』はやぎたこさんの世界にどっぷり浸った後で、いつの頃からか第三部が開催されるようになった。
やぎたこさんとましゅまろままがそれぞれ対角線に向かい合ってマイクを中央に車座に座るステージ。何を演奏するのか決めないままに、相手の出方を見つつ・聞きつつそれぞれ順番に演奏するこの第三部。ポイントは「対角線に」座ることだ。
相方と向かい合っているから「あっち、この曲やってるけど、次こっちはなにやる?」とか相談できない。目配せでその曲ならこっちはこれか??だよね、ニヤリ。みたいな・・・あのドキドキする演奏。でもワクワクする時間。言葉を交わさなくても演奏を聞いていたら自然と次にやる曲は同じ曲を思っていて、なんのセットリストもない、その演奏も思案もお客さまの呼吸も、全てが合わさって作っていくステージだった。
ましゅまろままの演奏中にもやなぎさんがフィドルで入ってくれたり、オートハープが聞こえてきたり、貴子さんのハミングやアコーディオンが聞こえてきたり・・・
今思い返してもホント、あんなLIVE、無いよ。やぎたこさんと一緒だったから、ちょっと、すごく、おこがましいけど、『やぎたこ』さんと『ましゅまろまま』だからできたLIVEだったと思う。


今もウソみたいで全く信じられないけど、やなぎさんはもういない。でもやなぎさんのカケラが私たちの音の中にいっぱい散らばってるし、ずっと生き続ける。ずーーーっと!!!



7月23日土曜日、松本市中山の上和構造改善センターにやなぎさんと縁のあるみなさんが集まります。ましゅまろままも思いを込めて演奏します。どうぞよろしくお願いいたします。



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